埼玉県に住む68歳のWさんは、奥さんと、32歳の次男と3人で実家で暮らしています。36歳の長男は、実家を出て、同じ埼玉県にあるワンルームマンションに一人暮らしをしています。
Wさんの財産は、狭いながらも長年のローンで買った自分の土地とマイホーム。そして地味にコツコツためてきた貯金がいくばくか。いわゆる地主と呼べるほどの不動産資産があるわけではありませんが、堅実な暮らしを心がけてきました。
定年後も嘱託社員としてまだまだ元気に働いているWさんにとって、相続を真剣に考えるにはまだ早いタイミングでしたが、あることをきっかけに、今のうちに遺言書を書いておこうという気持ちが強くなりました。理由は、「次男に自分の財産をすべて相続させたい」という意向を形にしておきたかったというものでした。
意思が固まっていたWさんは、さっそく行動を開始しました。最初は地元の弁護士先生に遺言書の作成を相談しようかとも思いましたが、地元の人付き合いに家族のことが知られてしまうのも嫌だと考えました。そこで、相続財産はもっぱら土地と家でしたので、東京にある不動産相続解決センターに相談してみることにしました。
無料コンサルティングでWさんの相談内容をヒヤリングした鈴木さんは、さっそく不動産相続解決センターのコンサルタント・税理士・弁護士・司法書士等による解決チーム内でディスカッションし、Wさんへのアドバイスプランをまとめました。
まず、遺言書を書こうと思った理由、そして次男にすべての財産を相続したい理由についてWさんに話してもらいました。
「ほんとうにお恥ずかしい話なんですけど、うちの長男はね、ろくでなしなんですよ。とにかくお金にルーズで、自分の稼ぎや身の丈に合わない買い物をする。酒もよく飲む。以前は結婚していたんですが、3年前に離婚したのもそれが原因ですよ。それで、母親や、弟や、親戚たちにまで、何度も何度も金を貸してくれという。それでも一度も返ってこないから、みんなあいつを避けるようになる。でも私には金をくれと言ってこないんですよ。怒鳴られるのがわかっているからでしょう」
「それで、先月ですけど、私が仕事で家にいないときに、あいつが家に来たんですよ。母親に金の無心に来たんです。それであいつは、体の調子が悪いとか、仕事がうまくいっていないとか、あれこれ理由をつけて、泣き落としですよ。実の息子がオレオレ詐欺をやっているようなものです、ひどい話です。それでやっぱり母親というのはどうしても優しさがあるから、これで最後だよといって、なんと100万円を渡してしまったんですよ。いやぁ…。私もコツコツ貯金をしてきた、今でも働いてお金を貯めている、妻もたいへん節約してきた、うちの次男も稼ぎを家に入れてくれている、みんなお金を稼ぐ大変さは嫌っていうほどわかっているんですよ。そんな大事なお金をね、今後もずっとせびられて、しょうもないことに無駄使いされるのかと思ったらもう、我慢ができなくなった。それで、全財産を次男に譲るっていう遺言書を書いておいて、あいつ(長男)とは縁を切ってやろう、二度とうちの敷居をまたぐなと言ってやろう、というふうに思ったんです」
しかしWさんは、鈴木さんのコンサルティングを受けるなかで、自分が大きな勘違いをしていたことに気づきました。
「ほんとうに、無知というのは怖いです。最初は、『遺言書に書かれたことは絶対だ』って思っていたんですけど、鈴木先生から『遺留分』っていう制度を教えていただいたんですよ。いくら遺言書に、次男に全部…と書いてあっても、長男にも法的に守られた遺留分という割合の請求権があって、その権利は遺言書の内容より優先されるんですよね、そうなんですよ」
「それでも気持ちでは納得が行かないから、鈴木先生にも、納得が行かないという話をしました。そうしたら、そういう遺言書…つまり、遺留分を無視した遺言書が書かれるケースはままあるそうで、そういう場合、遺留分を無視された側が裁判を起こして、裁判費用がかかったり、家族の仲が決定的に険悪になってしまうケースが多いと。…で、考えました。たしかにうちの長男に財産を渡すのは嫌だが、裁判を起こされたりするのはもっと、本当に嫌だ。それで、しょうがない、遺留分だけは長男にも相続するしかないと納得したんです」
その後、不動産相続解決センターの解決チームとの話し合いの中で、長男には遺留分に相当する現金を相続させ、次男には土地と家その他の財産を相続させるという方針が固まり、その方針に基づいて遺言書の骨子を作成しました。
「それでね。遺言書を作っていく中で、遺言書っていうのは随分そっけないものだな、って思いまして。
『長男○○に下記○○○を相続する。以上』
っていう感じで。それで、もともと金にがめつい長男が、これは不公平だ、なんだかんだといって、土地も家も半分よこせというふうに、もめるんじゃないかと不安になったんですよ。それで、なにか揉め事を防ぐ良い方法はないかと鈴木先生に相談したんです」
そこで鈴木さんが提案した解決策は…
「付言事項というのは、法律的に効力がある文章ではないけれど、それがあることで遺言書に心が宿るものなんですよ、家族に思いが残せるんですよということを教えてもらって。それで、こんな感じの付言事項を足したんです。
△△(次男)、おまえには先祖から受け継いだ家を継ぐものとして、土地と墓を守ってほしい。
○○(長男)、この現金はお母さんと一緒に一生をかけて一所懸命ためたお金だ、大切に使ってほしい。
○○、△△、どうかいつまでも兄弟仲良く支え合って暮らしてほしい。
これが父の最後のお願いです。
と。もう死んじゃった人間の最後のお願いですからね、断るわけにいかないですよね(笑)」
「遺言書を書くということをしてみて、最初はわからないことだらけだけど、本当によかったです。公証役場に行ったことも、良い経験になった。子どもに対して、どういう評価をしているのか、それをいつも心でモヤモヤと思っているだけでなくて、言葉にして、形にすることで、気持ちがほんとうにすっきりしました。逆に、長男に同情できる部分もあるなって思ったし、…あいつ(長男)のことを少し許せるようになったかもしれません」
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